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マンガ原作の実写映画は新規狙い?それとも原作ファン狙い?作品によって大違いのターゲット層

2018.03.28

©2017 映画「銀魂」製作委員会
実写版「銀魂」は2017年実写邦画No.1ヒットに。続編の公開日も決定


近年、たくさんのマンガ作品が実写映画化されています。原作ファンの間では、「原作のイメージに合うか」「期待できそうか」など、公開前から話題になります。フィールズ総研でも話題の実写映画化作品について調査をしていますが、作品によって、「原作ファン」と「原作を知らずに、実写映画を観賞する人(新規層)」の比率が大きく異なることがわかりました。今回は、このような観客層の違いと映画ヒットの関係について、データを使って考えていきます。 


フィールズ総研では毎年12月に、余暇に関するアンケート調査「Fields Yoka Survey(ふぃーるず よか さーべい)」(以下、FYS)を実施しています。今回はそのデータを使って、下記の5作品について見ていきます。いずれも2017年に実写映画化され、FYSでも調査した作品です。



■各作品でどのくらい違う?新規層と原作ファンの割合

まず、作品ごとに観客層の違いを確認したいと思います。
下記グラフに、実写映画鑑賞者における、新規層・原作ファン比率を示しました。
※便宜上、「原作ファン=原作マンガ・アニメなど、実写映画前に何らかの媒体で作品に触れたことがある人」として集計しています。


※集計対象:実写映画各作品の鑑賞者
※「鋼の錬金術師」の比率は、公開終了前に測定しているため参考値。(公開期間中に調査を実施)
※興行収入は2017年12月末時点の数字。
フィールズ総研が依頼した調査会社独自のもので、一般的な発表興収とは異なる場合があります


グラフのとおり、新規層・原作ファン比率は、作品により大きく異なっています。

1.銀魂、鋼の錬金術師は「原作ファン」比率が高い
2.亜人は「新規層」が特に多い
3.東京喰種、ジョジョの奇妙な冒険は概ね半々

参考までに、グラフの右に各作品の興行収入を掲載しています。今回は原作ファン比率が高く、興収的にもヒットと言える銀魂と、新規ファン比率が高く、元々の認知度を考慮すればヒットしたと言える亜人の2作品に注目し、それぞれの観客層にヒットした要因を探っていきます。 



■実写版銀魂は、原作の世界やノリを再現することで、原作ファンと新規層の両方を獲得!

まずは、実写版銀魂が「原作ファン」から支持を得た理由を考えていきます。

他の作品でもあることですが、銀魂の実写化発表時、原作ファンからは心配の声が挙がっていました。
その中で発信された原作者(空知英秋先生)のコメントは、原作ファンが実写化を受け入れるきっかけとなりました。「漫画の実写化はイメージと違うと叩かれるのが常ですが、もう今さら何をやっても読者の皆さんの銀魂のキャラ像はブレないと信じています」「銀魂は作品の性質上コケても痛くもかゆくもないし、むしろイジれる」などの言葉は、原作ファンの不安を払しょくし、映画の内容に興味を持たせるPRとして機能したと考えられます。

加えて、その後発表された映画の内容、PVもファンの期待を高めるものになっていました。
まず、キャラクターの再現度の高さです。キャラクターのビジュアルは、タイミングを分けて発表されましたが、公開されるたびに「原作のイメージがよく再現されている」と評判を呼びました。再現度の高さはビジュアルだけに留まりません。橋本環奈さんや中村勘九郎さんの体当たりすぎる演技は「こんなにやって大丈夫なのか」と心配になるほどですし、上映前に配信された動画・CMは役者たちが全力で走り回る場面ギャグシーンが入り、銀魂らしいドタバタコメディの雰囲気が伝わってきます。このような、"やりすぎとも思える作り込み"は、インターネット上やSNSで肯定的に受け止められていました。 

原作再現をアピールした、これらの公開前情報は、原作イメージを大切するファンにとって、実写への期待感を高め、映画館に足を運ぶ後押しとなったことでしょう。

原作ファン向けに作りこまれた映画の“尖った”特徴やその評判は、「新規層」にも影響した可能性があります。
原作ファンからの前評判の良さ・口コミは、新規層に「良さそうな映画」という印象を与えたはずです。さらに、銀魂の場合、原作ファンの間で大きく話題となったこと、PV動画の再生数が多く、3日で500万再生するものが出るほどだったことで、銀魂をみたことがない新規層の目に留まり、その内容から関心を持たれたと思われます。

ここまでの話を振り返ると、銀魂が「原作ファン」「新規層」の両方にヒットしたのは、早い段階で原作ファンに実写化が受け入れられ、公開前からポジティブな評価を得たことが肝だとも推察されます。銀魂と同様に、鋼の錬金術師も「原作ファン」比率の高い作品ですが、銀魂ほど興行収入は伸びていません。両作品の結果を分けたのは、おそらく、公開前に原作ファンの不安を払しょくし、実写化を受け入れられたかどうかにあると思われます。鋼の錬金術師も原作にビジュアルを寄せる工夫を行っていましたが、中世ヨーロッパを舞台にした世界観の中で日本人が原作を再現する壁は高く(銀魂は日本が舞台) 、今後もマンガ原作映画化の課題になってくるかもしれません。



■亜人はアクション超特化で「新規層」を獲得!

次に、「新規層」にヒットした亜人をみていきます。どのような点が新規層に響いたのでしょうか。
CMやPVを振り返ってみると、ビルの爆発、銃乱射など動きのあるシーンとともに、「死ぬほど激しい」「エンドレスリピートバトル」といった文字が入り、見応えのあるアクションを期待させるものになっています。このようなプロモーションが、アクション好き「新規層」の興味を惹いたと思われます。
では、この作品の原作は、元々アクションが評価されていた作品だったのでしょうか。新規層と原作ファンが、『亜人(原作含む)』という作品について、どの部分に魅力を感じているかを確認することで、それを検証していきます。

下記のグラフをみてみましょう。新規層・原作ファン別に、亜人の魅力点として回答の多い項目をグラフ化したものです。


※集計対象:亜人実写映画の鑑賞者で、亜人を「とても好き」「やや好き」と回答した人
※魅力点は、実写映画に限らず、マンガ、アニメなどの魅力も含まれる
※魅力点として、集計スコアが10%以上となった項目を表示


新規層と原作ファンのグラフ(魅力)の違いに注目してください。
まず目を引くのは「アクションシーン」です。原作ファンも魅力点として挙げていますが、新規層では圧倒的に高く、かなり強いイメージを持たれています。しかし、「恐怖・狂気・病み・怖さ」は、原作ファンのグラフでは「アクションシーン」以上のスコアである一方、新規層ではそこまで評価されていません。実写映画では、原作マンガの魅力のうち「アクション性」のみを大きく際立たせて、それ以外の要素は抑え目にする、という作り方が採用されていそうなのです。

グラフデータやプロモーション内容をもとに考えると、亜人は原作を忠実に再現するのではなく、あえて「新規層」をターゲットに据えて、「アクション性」が刺さるような作品作りをしたと考えられます。 この“尖った”特徴は、アクション好き「新規層」を呼び込むだけに留まらず、もしかしたら、「他にない斬新な映画が見られるかもしれない」と考え、映画館に足を運んだ人もいるかもしれません。

このように、亜人は映画の作られ方やプロモーションにかなり “尖った”特徴があり、これが「新規層」に刺さったと推測できます。また、亜人は青年マンガ原作で、人気少年マンガほどの認知度はないことを鑑みると、新規層をターゲットに大きく舵を切る戦略は的確と言えるでしょう。


■おわりに

今回の検証により、マンガ原作の実写映画について、下記のことがわかりました。

①客層(新規・ファンの割合)は、作品により大きく異なる
②銀魂は、原作再現を重視した作り方で、原作ファンに実写化を容認されたことがヒットのきっかけとなった可能性がある
③亜人は、新規層をターゲットとして、アクション性を強く目立たせたPR・映画作りが成功要因になっていそう
④今回みたヒット作品(銀魂・亜人)では、映画内容に“尖った”特徴がある点で共通している

同じ「マンガ原作の実写映画」だからといって、どれも同じ方式で進めるのではなく、作品ごとに異なるターゲット設定が採用されているのです。そして、ターゲット層を決めて、そこに特化した(尖った)作品作り・アピールをすることが、マンガ原作実写映画の成功に繋がるのかもしれません。ターゲット層を決める際には、恐らく、「その作品が世の中でどれだけ認知されているか」を踏まえて検討する必要があるでしょう。また、銀魂のように、原作ファンをターゲットにする場合は、原作ファンが求める作品づくりに加えて、原作ファンが映画化を容認したくなるような プロモーションを計画する必要があるかもしれません。

今回確認したのは、銀魂・亜人の2作品に留まるので、他の作品での検証も必要ですし、今後確認する中で、ここに挙げていないヒット要因が見つかるかもしれません。2018年もたくさんのマンガ原作の実写映画化が予定されていますので、引き続きフィールズ総研では、検証を続けていきたいと思います。


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(記事:南條)

本記事は、エンタテインメントの研究をしているフィールズ研究開発室(FRI)のメンバーが、日頃の活動の中で気になったことに目を向け、独自取材に基づいて、執筆しています。

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(※1)「Fields Yoka Survey 2018」
2017年12月に、全国の小学生~69歳の男女11,642人に対し、余暇に対する行動や、価値観などについて実施したWebアンケート調査。
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