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ネコノミクスが意味する人のこころと余暇の現在・未来~”夜廻り猫”から”クリプトキティーズ”まで

2018.03.14


「泣く子はいねが~ 一人で泣く子はいねが~~ ん 涙の匂い!」

出所:漫画「夜廻り猫

  • 家計の足しにと禁止されているバイトに励むところを同級生に見つかってゆすられるも、母の誕生日に花を買うことを忘れない学生
  • 恋い焦がれていた女友達が親友とできてしまったことに知らぬふりする男子
  • 23年間毎日人知れず、心の中で道行く人に「いってらっしゃい 元気でね」と挨拶を続ける女性
  • 犬の散歩途中で近所の主婦に会い、飼い犬人気を自分のものと勘違いする自意識過剰なお父さん

そこに描かれているのは社会の様々な軋轢の中で苦しむ人の涙と日常の小さな幸せ。遠藤平蔵こと頭に缶詰を載せた半纏(はんてん)姿の猫は、そうした人間達の涙の匂いをかぎ取って寄り添っていく。

猫の平蔵は泣いている人の話は聞くが、特にその問題を解決するわけでもない。

これは「夜廻り猫」というTwitterから生まれた8コマ漫画で描かれている世界だ。


この漫画の中で人は猫に癒され、人はこの漫画を読むことで涙する。


■ 飼育数で初めて犬を超えた猫~人は何を求めているのか


2017年末に発表された「全国犬猫飼育実態調査」によれば、1994年の調査開始以来初めて日本で猫の飼育数(952万頭)が犬の数(892万頭)を上回った。

この調査でも、猫を飼うきっかけは「生活に癒し・安らぎが欲しかったから」が30%以上を占めて第1位だ。

どうやら人間さまは今の社会の中で疲れているようだ。

ではなぜ犬ではなく、猫なのか。

飼育費や散歩のことだけが理由ではないように思える。

犬も猫も「可愛らしい」という共通の魅力があるが、猫には犬にはない「ミステリアス性」と「マイペースぶり」に特徴がある。

好きになる相手(猫)は自分の心の投影であるという考え方がある。

先の調査結果での「癒し・安らぎが欲しい」とは、別の言葉でいえば、ストレスフルな社会環境の中で、穏やかな変化を楽しみつつ自分らしく過ごすことで安心感を得たいという欲求を指しているのだろう。

「ミステリアス性」は謎めいた変化のあるものに惹かれる心の裏返し、「マイペースぶり」とは自分らしくありたいという心の裏返しだ。


■ 猫からみえるコンテンツ市場の未来


猫がもてはやされる理由にはもう一つの側面があるように思う。シェアする題材としての扱いやすさだ。

2016年2月5日に関西大学名誉教授・宮本勝浩氏が発表したレポート「ネコノミクスの経済効果」※の中で2兆3,162億円(2015年)と試算された猫関連市場。
(※ネコノミクスとはアベノミクスになぞらえた造語)

この中で、グッズ・本・映像などの猫コンテンツ市場は30億円。

冒頭で引用した「夜廻り猫」も単行本として3巻発売されており、この市場の一角を占める。

そしてテクノロジーの領域で注目を集めるブロックチェーンの世界でも、dApps(ダップス:分散型アプリケーション)ゲームとして最初に話題になったのは仮想の猫の売買・交配を楽しむ”Cryptokitties”(クリプトキティーズ/暗号子猫)だった。


またも「猫」である。

8つの属性(目の形、口の形、アクセントカラーなど)に基づく遺伝的アルゴリズム+運から生まれる多様な猫の形状。

日本人の目からすると妙なデザインではある。

しかし希少性が高い「FANCY」タイプなどを求めて、人々は交配に夢中だ。

生まれてくる猫そのものの形状がユニークでネタになると同時に、高値で売れる可能性があることがその一因だろう。

2017/11/28のローンチ後、2017/12/7に歴代最高額として1匹253ETH(=取引時$110707、約1,200万円)で取引されたことは知る人ぞ知る世界。


Cryptokitties”で取引された仮想子猫の歴代価格ランキング


このSNS全盛時代に写真や動画でも猫は大人気だ。

シェアする題材として、「人」は肖像権問題に至らなくても対人関係のトラブルになりやすく、既存の「キャラクター」は著作権の問題が発生しやすいからだろうか。

猫は上述の通り愛着度が高い上に、自由度が高く、加工がしやすい。

別の見方をすると、猫まわりで流行っていることはその後他の様々な取り組み・ビジネスにつながっていく可能性が高いともいえる。

先の”Cryptokitties”の例をとると、猫から火がついたdAppsゲームが瞬く間に多様なキャラクターの世界で横展開されて人気化していっていることがわかる。


名称とともに各サイトの図柄を見ると、にやりとさせられる。

「クリプトセレブリティ―ズ」はセレブをアイドルに置き換えてみると、この先に広がる世界が見えてくる。

dAppsゲームではこれまでのゲーム性に加え、トークン経済という大きな要素が加わる。キャラクター・アイテム・スキルといった無形の様々な価値もオープンな市場性をもつ世界だ。

これらの無形の価値は、共通のアセットとして様々なトランザクションデータとともに個々のアプリケーションを超えていく。

多数の問題をはらみつつも、様々な未来の可能性を想像することができる。

クロスメディアからクロスアプリケーション、そしてクロスチェーンへ。

数年後、YouTuberに変わって子供達がなりたい職業上位にdAppsゲーマーが登場するのか。


■ 最後に


猫は人に多くのことを教えてくれる。

筆者も猫を自宅で飼い、”Cryptokitties”でも猫と遊んでいる。


筆者の飼い猫と”Cryptokitties”で育成中の仮想子猫


人間さまではなく猫さまだ。


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(記事:吉田 和也)

本記事は、エンタテインメントの研究をしているフィールズ研究開発室(FRI)のメンバーが、日頃の活動の中で気になったことに目を向け、独自取材に基づいて、執筆しています。


 

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