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狭いファンから熱狂的支持を受けていた『Fate』シリーズ。そのスマホゲームFGOがヒットした裏には従来の『Fate』からの大胆な改革があった!

2018.01.24

画像引用:©TYPE-MOON / FGO ANIME PROJECT

2017年、Twitterで話題となった言葉を振り返る「Twitterトレンド大賞」において「Twitter WORD of the year」と「Twitter Game of the year」をダブル受賞した『Fate/Grand Order』(以下、FGO)。
『Fate』といえば今や有名コンテンツですが、当初はかなり少数のファンから熱烈な支持を得ているコンテンツでした。そのマニアックな『Fate』のスマホゲームがなぜここまでの地位を獲得したのか。今回はFGOが持つ魅力を探るべく、FRIが過去に行った「ゲーム性研究」も使いながら分析をしてみました。その結果、FGOのヒットの裏にはこれまでの『Fate』シリーズにはなかった3つ要素があることがわかりました。


■「ゲーム性」から見たFGO

FRIの「ゲーム性研究」では、先行研究を参考にしたゲーム作品の分析を通して「ゲーム性」に関する研究を行い、世の中のゲームが持つ固有の面白さを構成する4つの要素を整理しています。


※ここでは「ゲーム」と「ゲーム性」を以下のように定義します:
・ゲーム:一定の目標とルールを持ち、リスクとリターンを考慮してプレイヤーが意思決定を行う活動やそのシステム
・ゲーム性:プレイヤーに目標とルールを提示しながら、「面白さ」を提供する構造


この中でも特にゲーム性に強く結びついているのが「ルドストラクチャー」と「遊びのシステム」です。
「ルドストラクチャー」とは、簡単に言うと目標に対してリスクとリターンを伴う意思決定、つまり行動の選択肢(rudo)から成る構造(structure)です。「遊びのシステム」は遊びの本質的な面白さのことで、7つの要素があります。この「ルドストラクチャー」と「遊びのシステム」をどう掛け合わせるかで、ゲームとしての面白さ、つまりゲーム性が決定されます。

それでは、FGOの最もゲームらしい部分と言える「クエスト選択からクリアまで」のルドストラクチャーを見てみましょう。


※参考:「なぜ人はゲームにはまるのか」(立命館大学映像学部 渡辺修司 他)


FGOのルドストラクチャーは階層が多く、パーティや装備の編成、ターンごとのターゲット・使用するスキル・手札の順序などをどのように決定するかという、「戦略性」に伴う選択肢のバリエーションが豊富なのが特徴です。
しかし、このような構造は『クラッシュ・オブ・クラン』など他のゲームにもみられる特徴です。その『クラッシュ・オブ・クラン』には、他者を出し抜く「競争性」や、陣地を造形する「創造性/破壊性」などの遊びのシステムがありますが、FGOの場合は物語の設定上、他の協力者が存在せず、操作も手札を切るだけなので、これらのシステムがありません。ゲーム性の面からみると、FGOは特別な構造や遊びのシステムを持っているわけではなく、むしろ他のゲームよりも少ないシステムから成ることが分かりました。
では、FGOにしかない魅力とは、どこにあるのでしょうか?


■スマホゲームの常識を覆した設計

ゲーム性やキャラクターの魅力以外でよく語られているのはFGOのストーリーです。複数のインタビュー記事などで語られている通り、FGOは『Fate』シリーズの魅力である重厚なストーリーを中心にして作られたゲームであり、その長さは100万字を超えると配信当初から告知されていました。
実はこの試み自体が、スマホゲームとしてはかなり異質なものです。ちょっとした空き時間にプレイされることの多いスマホゲームに求められているのは、重厚なストーリーよりも短い時間で何度も楽しめるゲームだと考えられていたためです。しかし実際には、多くのユーザーがFGOの重厚なストーリーを受け入れました。
『Fate』シリーズのストーリーと言えばキャラクターや世界観の設定が複雑で難解であり、冒頭で触れたとおり、これまでは少数のコアなファンに支えられてきました。そんな『Fate』シリーズのストーリーを武器にしながら、なぜFGOはこれだけ多くのユーザーに受け入れられたのでしょうか。今度はストーリーの面からFGOを分析していきます。


■歴代『Fate』シリーズから大きく変更させた3つの点

『Fate』シリーズの原点である『Fate/stay night』は、手にしたものが願いを叶えられる「聖杯」をめぐって、7人のマスター(魔術師)がサーヴァント(歴史や伝奇上の人物)を召喚し、最後の1組になるまで戦う「聖杯戦争」の物語であり、バトルロワイヤルものです。戦闘シーンよりも、殺し合いの中で登場人物たちが互いの生き方や信念をぶつけ合う様子や、苦悩や葛藤、覚悟、克己する様子などが中心に描かれる重めのストーリーとなっています。その後誕生する『Fate』シリーズの派生作品でも、様々な時代の「聖杯戦争」が描かれています。
一方のFGOはというと、2016年に人類が滅亡することが発覚した世界で、プレイヤーである主人公がその原因を調査し、人類を救うことを目的とした任務「聖杯探索」に臨む物語です。その主人公は凡人でありながら、ある事件が原因で「聖杯探索」を行える唯一のマスターとなってしまい、2017年以降の人類の未来を守る使命を負うことになります。

ここに歴代『Fate』シリーズにはなかったFGOだけの要素が3つあります:
1つめは、これまでの『Fate』シリーズとはストーリーの構造が全く違うということです。これまでの『Fate』シリーズは、登場人物や時代、舞台などの設定は変わっても、遡ればどこかで歴史を共有している等の繋がりがありましたが、FGOではこれらの『Fate』シリーズでの出来事を全てパラレルワールドでの出来事として扱っており、『Fate』シリーズのどの作品とも歴史を共有していません。
また、これまでの『Fate』シリーズが共通して「マスターとそのサーヴァントが聖杯をめぐって戦う」という点を描いてきたのに対し、FGOは「未来を取り戻す物語」となっており、FGOの主人公は、聖杯をめぐって殺し合うのではなく、全人類を救うために戦うという、真逆ともいえる流れになっています。そしてそのシナリオ展開は、困難がある度に次々と仲間が助けに来たり、敵だったキャラクターが仲間になったりと、誰もが好きな王道ヒーロー的なストーリーになっています。
2つめは、主人公がただの凡人であるということです。歴代『Fate』シリーズ作品の主人公は、凡人と見せかけて実はものすごい能力や才能を持っているというケースがほとんどでしたが、FGOの主人公にはそういった展開が無く、正真正銘の凡人として描かれています。そのため、行動原理や価値観がプレイヤーに近く、主人公=プレイヤーとして物語が進んでも、ほとんど違和感なく理解・共感することができます。
以上2つの変更により、『Fate』シリーズを知らない人でもFGOの世界に入りやすくなったと考えられます。

そして、3つめの点は、FGOのストーリーが、期間限定イベントを含め、現実の時間軸と時系列が連動しているということです。私見では、この要素がFGOヒットの大きな起爆剤になっていると考えています。
メインシナリオライターで総監修を務めるTYPE-MOONの奈須きのこ氏は2014年のインタビューで「2015年に遊ぶからこそ意味があるゲームを作りたい」「唯一性のある娯楽を提供したい」と述べています。
出典:4Gamer.net(2014.10.10)http://www.4gamer.net/games/266/G026651/20141001120/

その言葉通り、FGOのストーリーは「2017年より先の未来を取り戻す物語」として展開し、2016年の大晦日に、物語第一部の締めくくりとして「2017年を迎えるために戦う」というエピソードが配信されました。現実世界で2017年を目前に控えたタイミングで、ゲーム内では2017年を迎えるために全プレイヤーが同時に戦っているという一体感、ストーリーのクライマックスに向かっていく興奮などが重なってSNS等で非常に盛り上がりました。


近年のエンターテインメントは、ライブ配信や舞台など、終わればなくなってしまう一過性の体験が盛り上がりを見せています。FGOはゲームの中心であるストーリー進行をうまく調整し、クライマックスと現実の時間軸のタイミングをリンクさせることで、全プレイヤーに対し「その時にしかできない物語体験」を提供することに成功しました。その結果として、ネット上にはFGOに関する書き込みが急増し、『Fate』シリーズを知らなかった人たちからも注目を集めました。そして、その新規ユーザーのために用意されたストーリーの設定が功を奏し、ユーザーが一気に増えたことが2017年以降のグラフの伸びからも見て取れます。


Google trendに見るFGO人気度の推移


また、2017年の大晦日には2016年と同様、現実の時間軸と一致した新たなストーリーの配信、およびTVでこれに関係する内容がアニメとして放送されるなど、2017年を取り戻した現在も、第二部の開始に向けた現実の時間軸と連動したストーリーが展開されています。

これら、歴代『Fate』シリーズから大きく変更させた3つの点全てがうまく機能したことで、FGOはここまでの成功を遂げたと考えられます。
スマホゲームでありながらストーリーを中心に置き、更にニッチな『fate』ファンのみを対象にするのではなく、あえて新規ユーザーを掴むために、現代のトレンドを敏感に取り入れたという挑戦が、FGOの成功に繋がったのではないでしょうか。

スマホゲームに全く新しい体験をもたらしたFGO。今年の春には第二部も控えており、まだまだ目が離せません。
今後どのような展開が待ち受けているのか、マスターの一人として楽しみに待ちたいと思います。


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(記事:小室)

本記事は、エンタテインメントの研究をしているフィールズ研究開発室(FRI)のメンバーが、日頃の活動の中で気になったことに目を向け、独自取材に基づいて、執筆しています。

 

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