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進化するお化け屋敷~「怖さ」を武器に人の集まる場を構築
(前編:台場怪奇学校、畏怖 咽び家)

2017.08.28

お化け屋敷と聞いて、多くの方は遊園地の奥にあるどこか懐かしい雰囲気のあの施設を想像するのではないでしょうか。子供のいる家族や若いカッブルで入場し、主に子供や女性が叫び声をあげて施設から駆け足で出てくる風景。

日本のお化け屋敷の起源は、大衆文化が花開き、未知なるものや恐怖に人々の関心が高まった江戸時代と言われています。その後、昭和の時代に各地にできた遊園地の定番常設施設として普及し、冒頭の今日の人々のお化け屋敷のイメージが形づくられていきました。

お化け屋敷だけでなく、この「恐怖」が最大の魅力となっている人気コンテンツは多いです。こちらは昨年末にFRI(フィールズ研究開発室)で実施した1万人調査(※1)の集計結果です。


「東京喰種トーキョーグール」の魅力要素に対する回答集計結果

東京喰種トーキョーグールの魅力要素


「ウォーキングデッド」の魅力要素に対する回答集計結果

ウォーキングデッドの魅力要素


人はこの恐怖という一見マイナスの感情を喚起させるものに惹きつけられてしまう性質があります。

近年、この恐怖の体験施設であるお化け屋敷が今まで何もなかった場所を活性化させたり、先端テクノロジーにより新しい体験効果をもたらしたり、人々の余暇にうるおいをもたらす存在として新たな価値を創造しつつあります。

夏真っ盛りということもあり、ホラープロデューサーの方へのインタビューを交えて、都心のお化け屋敷最新動向と、その恐怖体験が人々に何をもたらすのかについて、2回にわたってまとめてみたいと思います。


■デックス東京ビーチ SEA SIDE MALL 4Fの「台場怪奇学校」

このお化け屋敷はお台場にあるデックス東京ビーチというショッピングモールの一角にこぢんまりと設置されています。もともとは2004年にこの場所にオープンした「台場怪奇屋敷」が前身。

その後、2006年にリニューアルして今の名称になっています。


台場怪奇学校


このお化け屋敷に注目したのは、都心でおそらく遊園地以外に最初にできた本格的なお化け屋敷であること、そして日本で最恐という評判だからです。

ゲームセンターがかつてそうであったように、多くの新しいエンターテイメント施設は一部のマニアが愛好する特殊な非日常の場にあったものが、徐々に一般の人が行き交う場に進出することで利用者を増やし発展していく歴史をたどっています。お化け屋敷でその最初の流れを作った施設がこの「台場怪奇学校」です。

筆者は富士急ハイランドにあるギネスブックにも認定された「超・戦慄迷宮」の他、都心の常設お化け屋敷にほとんど足を運んでいますが、台場怪奇学校の恐怖度は群を抜いています。


■「台場怪奇学校」の魅力

舞台は40年前に廃校となり呪われていると噂されている小学校。参加者にはこの学校で亡くなった生徒一人を選んで、供養するというミッションを与えられます。

このようなミッションを与えられることで、参加者の意識が高まり、緊張度が増すことで恐怖の演出に対してもより反応してしまうことになります。

もう一つのこの施設の特徴は、恐怖感をあおる演出の巧みさにあると思います。

日常と隔離された暗く静かな空間内を手探り進んでいくと、人は何かでてくるのではという想像力の働きを制御できなくなり、不安な気持ちに包まれます。そんな中で急に前方だけでなく、後方からも何なのかがよくわからない物が、振動音をたてつつ素早く動きます。更にたたみかけるように、恐怖感をあおるような言葉が投げかけられます。

このギミック、演出のクオリティが、これまでの昔ながらの遊園地の決まりきった子供だましのような演出と一線を画しているのです。理性的に脳が対象物を認識する隙を与えず、次から次へとたたみかけてくるので、恐怖から身体が反射的に反応してしまうといったらいいでしょうか。

この施設では録音された音は使わず、裏の仕掛け人が実際にタイミングよく音や振動をたてつつ、相手に応じて言葉も使い分けていると聞きます。また、グループの最後の人や真ん中にいる人を狙い撃ちすることで、仲間同士の均衡を揺るがし、怖がらせることもあります。日本一の怖さもうなずけます。



■方南町にある一軒家のお化け屋敷~オバケン「畏怖 咽び家」

オバケンとは丸ノ内線方南町の一角にある、一軒家を活用したお化け屋敷の名称です。

このお化け屋敷は2012年にオープン後、毎年テーマを変えて展開されており、今年はシーズン5。その名も「畏怖 咽び家」(いふ むせびや)。6月23日に始まり、一つの世界観のもと、期間ごとに順次ストーリーが展開されていく設定となっています。

通常のお化け屋敷は参加者が入口から出口へ向かって恐怖を体験しながら歩いていくものです。それに対してこの施設の特徴は、恐怖体験の中、仲間とともにいくつかのミッションをクリアしていくフォーマットになっている点です。

今回はシーズン5第一章「畏怖との遭遇」と題し、体験者は方南町で格安物件を探しているという設定。一軒家には殺人鬼がいる中で隠された謎や試練を乗り越え、この一軒家から脱出するというミッションです。

先月、FRIではスタッフ4名で実際に足を運び、体験してきました。

当日初めて訪れた方南町の駅。こぢんまりとした駅ホームの佇まいの中を歩いていると、公式サイトで読んだ上記の設定が頭をよぎり、異世界に足を踏み入れたかのような錯覚に陥っていきます。


方南町を案内され…


駅でオバケンの担当の方と待ち合わせ、格安物件まで徒歩で案内されます。そこで目にした古びた一軒家。こんなところにこんな家があるのかとまず驚きました。


オバケン外観

体験した4人のFRIスタッフ この後…


説明を受けた後、荷物を預け、恐る恐る暗い一軒家の階段を上っていきます。


階段


■「畏怖 咽び家」の魅力

家の中はなんとか見える程度の暗闇です。ここからはネタバレになるので、いくつかの断片的な要素だけ書かせていただきます。体験しないとわからないユニーク性があります。

・通常のお化け屋敷と異なり、人形・ギミックではないリアルの演者による殺人鬼が階段を上ってきます。
・ちゃんと隠れないと見つかり、ある場所に閉じ込められてしまいます。
・脱出するためには暗闇で耳と目を凝らし、部屋とアイテムを探る必要があります。
・同行した人同士でうまく協力することが鍵となります。


一軒家内部

冷蔵庫の中も…


体験後、このシーズン5「畏怖咽び家」を監修されたオバケンの吉澤ショモジさんにお話しをうかがいました。


センターにいるのがオバケン 吉澤ショモジ氏


――なぜ方南町の一軒家を選んだのですか。

オバケンシーズン4を展開している時、運営会社(i.h.s group)で購入した物件をどう活用していくかという企画の中から生まれたのが今回のシーズン5での取り組みになります。
もともと映画「SAW」などの洋風の世界観が好きでやってきましたが、今回が初めての和風テイストになっています。


――こういったお化け屋敷をプロデュースしていくことになったきっかけは何だったのでしょうか。

小さい時からホラーものが好きで、人は死んだらどうなるのかをよく考えていました。お化けを見てみたいとずっと思ってきているのですが、残念なことに霊感がなく、未だに一度も見たことはありません(笑)。その後、学生時代にオバケンを一緒に運営している日比健と、ミュージックビデオをはじめ、映像制作を手掛けていました。自分で編集、照明、CG、小道具大道具制作など多くのことに携わる中、お化け屋敷の企画・制作にこれら全てのスキルが活かせることがわかり、今に至っています。


――お化け屋敷を作り上げる上で大事にされていること、こだわりなどはありますか。

どうやったら人を楽しませられるかですね。もともと従来の定型的なお化け屋敷とは全く異なる切り口でやりたいと考え、迷路やレーザートラップ、動いてはいけないルール等のミッションクリア型のお化け屋敷を作ろうと思い、現在のような企画になりました。


――今回のシーズン5の企画で苦労したことなどはありますか。

全てですね(笑)。一軒家を購入した時はボロボロの状態でした。きれいにするとともに、細部を補強し、過ごしやすい生活空間の導線をお化け屋敷用にするにはどうしたら良いのかをとても考えました。一見外は古びた古民家ですが、実は色々な技術が組み込まれていて、一見古びた蛍光灯の中に90個ものLEDが組み込まれていたり、環境音や演出音のスピーカーが約30箇所に組み込まれていたりします。

屋敷内を恐る恐る調べるFRIスタッフたち 緊張感が張り詰める


――この一軒家のお化け屋敷の他、ホテルをまるごと使用した宿泊込みのホラーイベント「オバケンホテル」、ゾンビが出没する村でキャンプをする「ゾンビキャンプ」、ミッションをクリアし生き残るために走る「オバケンラン」など様々な斬新な企画を手掛けていらっしゃいますが、オバケンの目指すところとはどういったことなのでしょうか。

シーズンオフの行楽地や施設を再活性化し、人が集まる場を作っていきたいと考えています。この方南町もお化け屋敷を通して遊園地のようにしていきたいという想いがあります。


――人はなぜお化け屋敷という、一見ネガティブな感情である恐怖の体験を求めるとお考えでしょうか。

お化け屋敷にいるお化けは作られたものという前提の上で成り立っています。人はドキッとしたり、叫んだりする非日常体験を通してストレスを発散したいのだと思います。エンターテイメントですね。以前シンガポールでもお化け屋敷を開催したのですが、日本と反応は一緒でした。ただ、日本と異なり、男性同士のお客様が多く女性のお客様が日本と比べると少ない印象でした。


――ビジネス上の課題などあれば教えてください。

やはり冬場は来場者が減るので、地方各地でのイベント開催、「オバケンのこわい話」というDVDやグッズの販売、他の企画とのコラボ、そして一つのストーリーを章立てし、期間を少しずつずらして長期にわたって展開していくことなどに取り組んでいます。今後はもっと海外にも展開していきたいと考えています。


■今回わかったこと

世界観とストーリーに基づきミッションを提示し、未知の恐怖体験へと人々の想像力を刺激。恐怖が迫ってくるという「緊張」と、うまく隠れられた時や危機を凌いだ時の「緩和」。ギミックを使った演出や特殊メイクなどのうまさ(「どうやってつくったのだろう?」)による感動。最後にミッションをクリアできた時の「安堵感」から生まれる「楽しさ」。そこでしか味わえない恐怖体験を通して、仲間との「共感」が生まれる。

お化け屋敷がエンターテイメントたる所以です。



台場怪奇学校
http://obakeland.net/

方南町お化け屋敷オバケン シーズン5
http://obakensan.com/if/


>>後編へ続く


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(記事:吉田 和也)
(取材協力:中村 健一)

本記事は、エンタテインメントの研究をしているフィールズ研究開発室(FRI)のメンバーが、日頃の活動の中で気になったことに目を向け、独自取材に基づいて、執筆しています。

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(※1)「Fields Yoka Survey 2017」
2016年12月に、全国の小学生~69歳の男女11,646人に対し、余暇に対する行動や、価値観などについて実施したWebアンケート調査。
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