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【スペシャル】ヒーロー




最終回 名もなきヒーローたちの時代へ

2017.09.19

これまで4人の漫画家先生方に、ヒーロー像についてお伺いしてきた「Special HERO」。一連のインタビューを通して、感じたことを徒然と振り返ります。

私自身、様々なことを考えて、そして気づいたことがある。インタビューをお願いした漫画家は、普段から親しくさせていただいている方たちばかりだが、今回のインタビューで、皆さんの新しい面を見出した気がする。共通して言えることは「皆さん、漫画が好きなんだな」ということ。そして、ひたすらまっすぐに進んできた人だけが持つ「いさぎよさ」など。



さて、まず最初にインタビューさせていただいた千葉てつや先生。戦争中から戦後にかけての苦しい時代の中で、ご両親に愛されたそのぬくもりが、千葉先生の漫画の主人公に脈々と受け継がれている。
ジョーも丹下さんも、普通の生活からは外れているけど、やはり、温かい。そして、すべての主人公は、何でもない普通の人から、様々な環境によって、育っていく。それがヒーローの成り立ち。ヒーローの本質がいかに普通の人であるのか、そしてそのような環境の変化は、今の時代誰にでも起こりうることだろう。



次のインタビューは里中満智子先生。里中先生は早い時期から漫画家となって活躍されている、本当に稀有な方。時代とか、歴史などにも造詣が深く、緻密な作品を残されている。実は日ごろ一番お会いする機会が多いのは里中先生かもしれない。でも会食しながらのお話しとは異なり、これまでの漫画の成り立ち、そして漫画への想いを、これほどストレートに伺ったのは初めてだった気がする。
特に印象深かったのは、海外での漫画の浸透についてのお話。国同士の仲が悪くなっても、漫画は人をつなぐ。そして若い世代が感激してマンガの想いを語る。漫画という一つのメディアが、国や時代を超えて、新しい感性のゆりかごになっていくのだろう。文字だけではなく、絵だけでもない。コマ割りや、吹き出しなどの様々な要素によって、新しい文化が築き上げられたことを、深く感じた。



その次のインタビューは、九州からの上京の折を狙って、竹宮恵子先生にお話を伺った。竹宮先生は大学の学長というお立場で、教育にも深くかかわり、日本における創作者の育成についても大変ご尽力されている。また、その漫画においても独特な世界観を表現しており、常に新しいことにチャレンジする、若々しい新鮮な活力を感じた。
お話の中で特に印象に残っている部分は、主人公はある程度認知されると、作者のものだけではなくなって、読者との共有になる、という点だった。例えば、昔の名作と呼ばれている漫画の主人公について、その続編を書こうと思った時に、これまでの作品のイメージからはかけ離れることはできないだろう、ということ。つまり社会に出た漫画のヒーローたちは、すでに作者の意図だけではない、別の人格をもって、たくさんの人たちに様々な想いを届け続けていくのだろう。



最後のインタビューは赤松健先生。それまでの先生方からは一世代若い漫画家で、またその在り方もまったく異なるものだった。
赤松先生の漫画は、時代そのものだと思う。つまり、何を求められているのか、そして時代がどんなキャラクターを必要としているのか、それを考えて作品が生まれる。そこでは一人のキャラクターではなく、複数のキャラクターがいたり、さらに大人数のキャラクターであったりする。このお話を伺っていて、私はAKBというグループを思い出した。時代が欲しているのは、個人ではなく、グループなのではないか。しかし、そんな中でも、中心になるのは気弱だったり、好奇心旺盛な普通の若者だったりする。逆に赤松先生の作品の中では、そんな普通の人がヒーローだったりするのだろう。特別なことをせず、でも奇想天外な境遇に陥り、不思議な生活を体験していく。まさに、特別な力を持ち合わせてはいないが、特別な境遇を切り開いていく、新しいヒーローなのだと感じた。

皆さんのお話を聞いていて、特定の意図のもとにヒーローが作られているのではない、ということを共通項として感じている。これは現実の世界でもいえるのではないか。つまり、ヒーローと言える人たちは、目の前に降りかかる、様々な境遇を切り抜けるうちに、誰もが体験したことのない世界を垣間見ることができ、そして様々なことや物を手に入れる。ただ、もしかしたら、ヒーローと呼ばれている時でさえ、本人はそんな気持ちになっていないのではないだろうか。漫画のヒーローたちは、作者から飛び立っていくと竹宮先生はおっしゃった。千葉先生は、普通の人を書いていたら、それが作品の中で成長していった、と話された。里中先生は、歴史の中で初めてヒーローが語られる、とおっしゃった。そして最後に赤松先生は、自ら生まれるものじゃない、時代に求められて現れるだけ、と――。

私たちの時代、この混迷しつつも面白く劇的な変化を繰り返していく現代。そして東京オリンピックを3年後に控えたメガロポリス、東京。もしかしたら、すでにヒーローの卵たちは、この人がざわめく東京で、自分の物語をつづり始めているのかもしれない。そして、3年後の時代の変わり目に、いきなりのように表舞台に躍り出て、私たちを勇気づけてくれるのではないだろうか。

ヒーローを考えて始めたこの企画の最後に、次のヒーローを予感することが出来たのは幸せだと思う。そしてまだ見ぬヒーローたちに思いをはせて、このシリーズを終わりたい。あなたが明日のヒーローであることを、心から願っている。

(記事:瀬尾 太一)


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