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コンテンツ東京・特別講演「AI×クリエイティブ」
③山川宏氏講演レポート
~脳型AIと創造性~

2017.07.07

6月29日、「コンテンツ東京/AI・人工知能EXPO」において行われた特別講演「AI×クリエイティブ」(速報レポートはこちら)。最終回は、「脳型AIと創造性」をテーマにお話された山川宏氏(ドワンゴ人工知能研究所所長/NPO法人 全脳アーキテクチャ・イニシアチブ代表)の講演概要をお届けします。



■「シンギュラリティ」と「創造的AI」

私自身は長らく脳とAIの分野を研究していまして、本日は「シンギュラリティ」と「創造的AI」についてお話したいと思います。
まず「シンギュラリティ」を簡単にご説明しますと、AIが人間の能力の限界を超えること、人間の理解の範疇を超えることで起きます。今のレベルのAIではシンギュラリティは起きないでしょう。なぜなら、現在のAIは人が設計しているので、設計した人間の理解の範疇を超えることが難しい。つまり人間がある意味“律速段階”(この場合、AI進化速度の上限値を規定する要因)になっているわけです。
しかし、いずれ人工知能自体が人工知能を設計するようになると、設計の主役が人間からAIに変わります。そうなると、人というボトルネックが外れて自己再帰的な知識発展の循環が起き、技術が今以上に加速度的に進歩する――その時にシンギュラリティが起こるだろう、というのがひとつの考え方です。

その背景には、松原先生がお話された「汎用性」と、栗原先生のお話された「自律性」の2つの要素があると考えています。「汎用性」というのは応用タスクの広さ、つまりいろんなことができるということです。また、「自律性」というのは効率的かつ安全に世界を知ろうとする側面があるわけです。
ただ実は「自律性」を実現するためには、ある程度、自分自身が経験していないことに想像がついていないと、そもそも自律的に動けません。なぜなら経験したことだけしかわからないと、新たなことが起きるリスクを想定できないからです。つまり技術的には「汎用性」が「自律性」のベースになっていなければなりません。


■創造性を発揮するためのプロセスとは


では、創造性を発揮するための基本プロセスについて、私の持論をご説明したいと思います。
創作物ができるまでには、3つのプロセスを経ると思っています。まず初めに、①いろんな経験やデータに基づいて、部品ものようなものを抽出します。次に、②その部品を組み合わせたりパラメータを変えたりしながら探索し、創作物の候補を出します。そして、③上手く見つけた創作物の候補を評価し、最終的に創作物にします。

仮にこのような一連のプロセスがあるとすると、特に「② 組み合わせパターンを探索する」といのは、非常に膨大な作業になるわけです。そこで用いるのが、似ている事象から知識を持ってくるという「類推アナロジー」という手法です。例えば、地球は太陽の周りを回っていますが、この天体の知識から、原子と電子の関係を見つけるといった手法です。こういったやり方は、実は最近、機械学習の分野では「転移学習」と呼ばれていて、探索空間を狭くする(探索の優先づけ)研究がかなり進んでいます。


■「マインド・アップローディング」とは


さて、私は脳についても研究してきていますので、今日は「海馬」についてもお話したいと思います。海馬というのは、最近のことを覚えておくシステムで、海馬に一旦記憶されたもので特に印象が強いものは、その後2か月間くらいかけて大脳新皮質のメインメモリーに転送するという役目を果たしています。脳には2つのメモリシステムが存在しているわけですが、新しく創造的なアイデアが浮かぶ時は、この海馬にある「最近の記憶」と大脳新皮質にある「熟成された記憶」とが相互作用することで生まれるのではないかと考えています。人間の脳に即して考えると、「創造的AI」にも2つの記憶システムが必要とされるかもしれません。

海馬の例は一例ですが、私が研究している「脳型AI(全脳アーキテクチャ)」とは人間の脳の創造性・特質に注目して汎用性と自律性のあるAIを実現しようとするものです。その研究の一環として、「マインド・アップローディング」という技術開発にも取り組んでいます。この技術は、要は人間の心をAIに転移させるというものです。
これを実現するためには、人間の脳活動データや脳全体のコネクトーム(神経回路図)を測定する技術と、そのデータをアップロードするための技術を上手く組み合わせる必要があり、さらに他にもクリアしなければならない難しい問題がありますが、実現はできると思っていますし、さらにこの「汎用的AI」ができれば、手塚治虫先生のデジタルクローンも現実味を帯びてくると考えています。



最後になりますが、手塚先生のデジタルクローンが完成した暁には、これから先のシンギュラリティが起きる世界を人間はどう生きていけば良いのか、手塚先生の哲学や価値観を聞いてみたいですし、そういったヒントを与えてくれるようなマンガ作品が生まれることを期待しています。


■コンテンツ東京・特別講演「AI×クリエイティブ」の関連記事(全4回)

・【第1回】速報レポート ~AIは手塚治虫のような作品を生み出せるのか?~
・【第2回】松原仁氏講演レポート ~人工知能と創造性~
・【第3回】栗原聡氏講演レポート ~クリエイティビティの本質と、AIによるイノベーションの鍵~
・【第4回】山川宏氏講演レポート ~脳型AIと創造性~



*「手塚治虫デジタルクローン」Projectとは…
『アトム ザ・ビギニング』に登場する、アトムを生んだ若き天馬博士とお茶の水博士が所属する研究室「練馬大学 第7研究室」を実際のAI研究者の方々と立上げ、そこでクリエーターの創造活動を支援するクリエイティブAI「手塚治虫デジタルクローン」を開発することを目指すプロジェクトです。
お問い合わせはこちら。
http://www.7ken.org/

*NHK総合毎週土曜23時から『アトム ザ・ビギニング』アニメ放映中!
http://atom-tb.com/

*コミックは現在月刊ヒーローズに連載中、単行本6巻発売中!
http://www.heros-web.com/works/atom/

*FRIは『アトム ザ・ビギニング』、「コンテンツ東京 特別講演」、「手塚治虫デジタルクローン」Projectを応援しています。


 

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